別紙第1 Jグレード(めっき鋼板取扱工場)の適用範囲と別記事項
1.鉄骨溶接構造の3階以下の建築物(延べ床面積500u以内、高さ13m以下かつ軒高10m以下)とする。
2.400N級炭素鋼で板厚16mm以下の鋼材とする。
ただし、通しダイアフラム(開先なし)の板厚は400N及び490N級炭素鋼で22mm以下とし、ベースプレートの板厚は、「別記1 ベースプレートの板厚及びGコラムパネル厚肉部の板厚」による。また、溶融亜鉛めっき鋼板(「別記2 入熱・パス間温度」に示す建築基準法第37条第1号によるJIS規格材又は同第2号に適合する認定材料)の場合、400N及び490N級炭素鋼で板厚9mm以下とする。
3.作業条件は原則として下向姿勢とし、溶接技能者の資格はSA-2F又はA-2Fとする。
ただし、横向姿勢を用いる場合、溶接技能者の資格はSA-2F及びSA-2H又はA-2F及びA-2Hとし、かつ溶接管理技術者はWES2級又は鉄骨製作管理技術者2級あるいは管理の実務を資格取得後3年経験した2級建築士の資格を保有していること。また、横向姿勢による完全溶込み溶接部の超音波探傷検査は全数とする。また、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、SN-1F又はN-1Fとし、横向き姿勢を用いる場合はSN-1F及びSN-1H又はN-1F及びN-1Hとする。
4.鋼種と溶接材料の組み合わせによる入熱及びパス間温度の管理値は、2.の範囲内で「別記2 入熱・パス間温度」による。(400N級炭素鋼(STKR、BCR及びBCPを除く。)及び400N級炭素鋼(STKR、BCR及びBCPに限る。))の項による。また、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、「溶融亜鉛めっき鋼板」の項による。)
別記1 ベースプレートの板厚及びGコラムパネル厚肉部の板厚
溶接方法 |
鋼 種 |
最大板厚 |
備 考 |
CO2ガスシールドアーク溶接 |
400N級炭素鋼 (SS400を除く。) TMCP鋼※1 |
75mm以下 |
※1 国土交通大臣認定品かつ降伏点325N級の鋼材 |
SS400 |
50mm以下 |
||
490N級炭素鋼 (TMCP鋼を除く。) |
50mm以下 |
||
低水素系被覆アーク溶接 |
400N級炭素鋼 |
40mm未満 |
|
490N級炭素鋼 |
32mm未満 |
||
低水素系以外の被覆アーク溶接 |
400N級炭素鋼 |
25mm未満 |
別記2 入熱・パス間温度
鋼材の種類 |
規 格 |
溶接材料 |
入 熱 |
パス間温度 |
400N級炭素鋼 (STKR、BCR及びBCPを除く。) |
JIS Z 3312 |
YGW-11、YGW-15 YGW-18、YGW-19 |
40kJ/cm以下 |
350℃以下 |
30kJ/cm以下 |
450℃以下 |
|||
JIS Z 3313 |
T490Tx-yCA-U T490Tx-yMA-U T550Tx-yCA-U T550Tx-yMA-U |
40kJ/cm以下 |
350℃以下 |
|
30kJ/cm以下 |
450℃以下 |
|||
JIS Z 3211 |
引張強さ570Mpa以上のものを除く。 |
40kJ/cm以下 |
350℃以下 |
|
JIS Z 3214 |
引張強さ570N/mm2以上のものを除く。 |
|||
JIS Z 3315 |
YGA-50W、YGA-50P |
|||
400N級炭素鋼 (STKR、BCR及びBCPに限る。) |
JIS Z 3312 |
YGW-11、YGW-15 |
30kJ/cm以下 |
250℃以下 |
YGW-18、YGW-19 |
40kJ/cm以下 |
350℃以下 |
||
JIS Z 3313 |
T490Tx-yCA-U T490Tx-yMA-U |
30kJ/cm以下 |
250℃以下 |
|
T550Tx-yCA-U T550Tx-yMA-U |
40kJ/cm以下 |
350℃以下 |
||
溶融亜鉛めっき鋼板 (JIS G 3302、JIS G 3312、JIS G 3321、JIS G 3322等) |
溶接される溶融亜鉛めっき鋼板に応じて、それに適合する溶着金属としての性能を有する溶接材料を使用しなければならない。 |
(注)ロボット溶接の場合、(社)日本ロボット工業会による建築鉄骨溶接ロボットの型式認証条件に従うものとし、別記2はロボット溶接には適用しない。
別記3 予熱管理
@溶接方法、鋼種及び板厚の組合せに対する予熱温度は、下表による。
溶接方法 |
鋼 種 |
板 厚(mm) |
||||
t<32 |
32≦t<40 |
40≦t≦50 |
50<t≦75 |
75<t≦ 100 |
||
CO2ガスシールドアーク溶接 |
400N級炭素鋼 (SS材を除く。) |
予熱なし |
予熱なし |
予熱なし |
予熱なし |
50℃ |
490N級炭素鋼 (TMCP鋼※1を除く。) 520N級炭素鋼 |
予熱なし |
予熱なし |
予熱なし |
50℃ |
80℃ |
|
SS400 |
予熱なし |
予熱なし |
予熱なし |
※3 |
※3 |
|
TMCP鋼※1 |
― |
― |
予熱なし |
予熱なし |
50℃ |
|
低水素系被覆アーク溶接 |
400N級炭素鋼 (SS材を除く。) |
予熱なし |
予熱なし |
50℃ |
50℃ |
80℃ |
490N級炭素鋼 (TMCP鋼※1を除く。) 520N級炭素鋼 |
予熱なし |
50℃ |
50℃ |
80℃ |
100℃ |
|
SS400 |
予熱なし |
予熱なし |
50℃ |
※3 |
※3 |
|
TMCP鋼※1 |
― |
― |
50℃ |
50℃ |
80℃ |
|
低水素系以外の被覆アーク溶接 |
400N級炭素鋼 |
50℃※2 |
50℃ |
※3 |
※3 |
※3 |
490N級炭素鋼 |
※3 |
※3 |
※3 |
※3 |
※3 |
(注)※1:国土交通大臣認定品かつ降伏点325N級の鋼材(板厚は40mm超え100mm以下)。
※2:板厚25mm以上に適用する。
※3:当該部の溶接を適用する場合は、予熱温度設定のための事前検討方法を適切に定める。また、当該部を適用しない場合は、その旨を明記する。
A予熱は上表予熱温度以上、200℃以下で行うものとする。予熱の範囲は溶接線の両側100mmを行うものとする。
B板厚と鋼種の組合せが異なる時は、予熱温度の高い方を採用する。
C板厚100mm超の溶接及び大電流溶接などの特殊な溶接では、施工試験等により有害な割れが発生しないことを確認し予熱条件を定めるものとする。扱いは、「※2」に準ずる。
D気温(鋼材表面温度)が鋼種400N級鋼の場合に0℃以上、鋼種490N級以上の高張力鋼の場合は5℃以上で適用する。気温−5℃未満では溶接を行わないものとする。気温が−5℃以上0℃(または5℃)以下で溶接する場合は別途適切な処置をとる。
E湿気が多く開先面に結露のおそれがある場合は40℃まで加熱を行う。
F拘束が大きいことが予想される場合は、上表より約40℃高い予熱温度を適用する。
G鋼材のJISの炭素当量で0.44%を超える場合は予熱温度を別途検討する。
別表第2 書類審査(亜鉛めっき鋼板取扱工場)
2.1 品質管理体制及び製作工程図
1)品質管理体制
申請書に添付の組織図は、建築鉄骨製作工場の組織として適切であり、かつ、各部署の役割が明記され、その役割が適切である。品質管理責任者の下で、原則として下記の管理技術者、管理責任者及び溶接技能者が適切に配置されていること。
・管理技術者、管理責任者は@とA、@とB、@とC、@とD、AとB、AとC、AとDの兼務を認める。
@製作全般を総合的に管理する製作管理技術者
1名は正社員、かつ、鉄骨製作管理技術者2級又はWES2級(資格取得後3年経験した者。)もしくは二級建築士の有資格者とする。
A溶接設計から溶接作業までの品質を管理する溶接管理技術者
1名は正社員、かつ、WES2級又は鉄骨製作管理技術者2級もしくは二級建築士の有資格者とする。
B製品の品質、検査に関する検査管理技術者
1名は正社員とするが、資格は不要とする。なお、検査は次の有資格者に実施させるものとする。(外注可)
(イ) 製品検査:建築鉄骨製品検査技術者の有資格者とする。
(ロ) 超音波検査:建築鉄骨超音波検査技術者又はNDI(UTレベル2)の有資格者とする。
C工作図作成、設計図書との照合チェックから出図及び変更処理等を行う工作図管理技術者
1名は正社員とするが、資格は不要とする。
D溶接技能者
1名は正社員、かつ、SA-2F又はA-2F及びSN-1F又はN-1Fの有資格者とする。
なお、@又はAが兼務可であるが、その場合、当該兼務者以外に溶接専門の技能者を配置すること。
(ただし、横向き姿勢を用いる場合、SA-2F及びSA-2H又はA-2F及びA-2H並びにSN-1F及びSN-1H又はN-1F及びN-1Hの有資格者が溶接し、WES2級又は鉄骨製作管理技術者2級、もしくは管理の実務を資格取得後3年経験した二級建築士の資格を持つ溶接管理技術者がいなければならない。)
E工作図、製作及び検査の外注管理を行う外注管理責任者
1名は正社員とするが、資格は不要とする。なお、@又はAの技術者の兼務は可とする。
F鋼材及び溶接材料の検査及び保管管理を行う材料管理責任者
1名は正社員とするが、資格は不要とする。なお、@又はAの技術者の兼務は可とする。
2)申請書に添付した製作工程図は、当該工場の実態に整合しており、各工程の管理技術者、管理責任者及び溶接技能者が明記されている。
2.2 社内基準の整備
1)下記の社内基準を必須とする。
@工作基準
A検査基準
B外注管理基準
−外注がある場合のみ−
2.3 製造設備の種類
1)下記の設備を必須とする。
・直立ボール盤
・ポータブル自動ガス切断機
・被覆アーク溶接機
・CO2ガスシールドアーク溶接機
・アークエアガウジング機
・クレーン
・下向溶接用治具
・溶接棒乾燥機
2.4 検査設備の種類
1)下記の機器を必須とする。
・各種精度測定検査器具
・電流・電圧計
・表面温度計又は温度チョーク
・ルーペ(倍率5以上)
・電磁膜厚計
2.5 製作実績リスト
1)鉄骨の製作内容の確認
直近12ヵ月間の製作実績リスト〔工事名、重量、最大板厚(完全溶込み溶接開先を取る部材)等〕で鉄骨の製作内容を確認する。
別表第3 工場審査(種類等の確認)【亜鉛めっき鋼板取扱工場】
3.1 工場の品質管理体制等
1)経営者又は品質管理責任者が説明する品質保証方針、品質管理体制、製作工程図及び工場概要等は、申請書に添付した組織図及び製作工程図と整合している。
2)申請図書の 「評価申請諸元表」
に記載された管理技術者、管理責任者及び溶接技能者のそれぞれ1名は正社員である。
3)申請図書の「製作実績リスト」等において、Jグレードの最大適用板厚の1/2程度の実績又は技量がある。
4)溶接を適切に実施できる作業環境が確保されている。
5)当該工場の品質管理体制は、適用範囲内の鉄骨を適切に製作できる品質管理システムとなっている。
3.2 工作図作成基準の整備(審査対象外)
3.3 工作基準の整備
1)当該工場の実態に即した工作基準があり、その記載内容は、当該工場の品質管理体制、製作工程図、製造設備等との不整合や記載事項の不足がない。
2)取り扱う鋼種及び板厚が明記され、適用範囲に適合している。
3)材質の識別方法が明記されている。
4)板厚及び溶接姿勢に応じた資格を有する溶接技能者の従事が明記されている。
5)鋼材と溶接材料の組合せ及び組合せに応じた入熱及びパス間温度の管理値が明記され、「別記2 入熱・パス間温度」の内容を満足している。
6)入熱及びパス間温度を適切に管理するため、板厚及び溶接姿勢に応じた溶接条件、層数、パス数及びパス間温度確認パス等が明記されている。
7)各管理技術者の保有資格及びその役割が明記されている。(ただし、横向き姿勢を用いる場合、WES2級又は鉄骨製作管理技術者2級もしくは資格取得後3年経験した二級建築士の資格を持つ溶接管理技術者が明記されている。)
8)切断精度、開先形状の管理値が明記され、スカラップ又はノンスカラップの形状・寸法が明記されている。
10)部材組立の際のずれ、食い違いの管理値が明記されている。
11)裏当て金、エンドタブの板厚、寸法の標準値、材質及び取り付け方法が明記されている。
12)基準は、適宜適切に改定されている。
13)溶接部の確性試験方法(引張試験、マクロ試験及びX線試験を含む。)が明記されている。
14)工作基準は、適用範囲内の鉄骨を適切に製作できるものである。
3.4 検査基準の整備
1)当該工場の実態に即した検査基準があり、社内検査の種類が明記され、その記載内容は、当該工場の品質管理体制、製作工程図及び検査設備等との不整合や記載事項の不足がない。
2)検査記録表に部材寸法、割れ、ずれ、食い違い、アンダーカット、ピット等を記録することが明記されている。
3)主柱の寸法検査項目として、柱の長さ、階高、柱のせい並びに仕口部の長さ及びせいが明記されており、全数検査とすることが明記されている。
4)大梁の寸法検査項目として、梁の長さ、せいが明記されており、全数検査とすることが明記されている。
5)溶接部の外観・精度検査項目として、割れ、ずれ、食い違い、アンダーカット及びピットを全数検査とすることが明記されており、それらの許容値は平成12年建設省告示第1464号に適合している。
6)内部欠陥(割れ、溶け込み不良等)の超音波探傷検査の抜き取り方法・合否判定基準が明記されており、その内容はJASS6に適合している。(ただし、横向き溶接の超音波探傷検査は全数検査が明記されている。)
7)検査の種類に応じた資格を有する検査技術者の従事が明記されている。
8) 基準は、適宜適切に改定されている。
9)溶接部の確性試験におけるピット及びブローホールに対して、合否判定基準及び確性試験記録表への記録が明記されている。
10)製品の溶接部の内部欠陥検査(X線試験:400N級鋼の場合はJIS Z
3104の3類以上、490N級鋼の場合は同2類以上を合格とする。)及び亜鉛めっき厚検査(280g/u以下とする。)を、それぞれ適切なロット単位で行うことが明記されている。
11)検査基準は、適用範囲内の鉄骨を適切に検査できるものである。
3.5 製作要領書作成基準の整備(審査対象外)
3.6 外注管理基準の整備
1)
当該工場の実態に即した外注管理基準があり、その記載内容は、当該工場の品質管理体制、製作工程図及び社内基準等との不整合や記載事項の不足がない。
2)外注管理責任者の役割が明記されている。
3)外注先の選定方法(グレードに合致した選定であること。)及び発注方法が明記されている。
4)受入検査の種類、検査方法及び検査記録を作成・保管することが明記されている。
5)基準は、適宜適切に改定されている。
6)外注管理基準は、適用範囲内の鉄骨製作の一部の工程を外注するうえで適切である。
3.7 工作図又は加工図の品質管理
1)設計図書に基づいた工作図又は加工図がある。
2)主要構造部の詳細がある。
3)工作図管理技術者がおり、設計図書と照合チェックをした記録があり、サイン又は押印を適切に行っている。
3.8 製作要領書の品質管理(審査対象外)